メモ
No. 6:Never Let Me Go| BLOG -CHISAI HASEBE-

No. 6:Never Let Me Go

March 28, 2011

昨夜、パリの友達が、「フランスの新聞に、プルサーマル用MOX燃料が、
四月上旬にもフランスから日本に送り出されるという記事が載っているよ」と教えてくれた。
私は、何も言えなくなって、「わかった」とだけ答えた。
それ以上の解説を聞くのもつらく、その話はやめてもらって、
悲しい気持ちでトナカイ柄の湯たんぽを抱いて眠った。
また三時間しか眠れなかった。

朝、起きて、机に向かい、ネットで検索してみる。
ネットのニュースは時間軸がとりにくく、どの記事が最新なのかわかりづらい。
(これは私がネットでニュースを読むことに慣れていないせい)
でも、私が眠っている間に、どうやら、MOX燃料の輸送延期の発表があったようだ。
良かった、と思うのと同時に、わけもなく涙が流れて、なんだか何もかもが嫌になった。

窓の外に目をやると、ディモルフォセカは花びらをいっぱいに広げて太陽の日差しを受けている。
新聞には今日から公開される映画『わたしを離さないで』の広告。
初日だからいっぱいかな?と思ったけれど、劇場に電話してみると席に余裕があるという。
ル・シネマだったらついでに隣の東急本店の園芸店に寄って、また鉢植えを買うのもいい。
外の空気を吸えば、少しは気持ちも晴れるかもしれない。

園芸店にはお客が4人ほど。
相変わらず閑散としている。
強風のため、あちこちで鉢が倒れている。
そういえば、妹がこの店のことを、「あそこ適当にずぼらな感じが和むよね~」と言っていた。
思わず吹き出してしまったけれど、それはまさに的を射た表現で、
私のような、花は好きだけど、園芸道を極める気などさらさらないという人間にとって、
この敷居の低い雰囲気は本当に心落ち着く。
今日は忘れな草が気になる。やっぱり小さな花に目がいく。


20110326_garden4.jpg


(以下、作品の内容に触れています、注意してください)
『わたしを離さないで』は、洋服やインテリアがとにかく可愛い映画だった。
私立学校で子供たちが着ている、丈が短くて袖が長いカーディガン、
寄宿舎のベッドにかかっているチェックの毛布や小花プリントの枕や寝巻き、
キャシーが大人になってから着るブルーのガウン、ニット帽、
ルースが着ているモヘアの編み込みセーター、キャシーの部屋のブルーの花柄の壁紙、
ハンガーに引っ掛けてある花、コテージのキッチンの窓にはめ込まれた淡い色のガラス・・・。

原作は去年読んだので、物語の展開に驚くところはなかったけれど、
ただ、残念に思ったのは、原作で私が一番好きだったシークエンスがばっさりカットされていたことだ。
少女時代のキャシーが「Oh,Baby baby,Never let me go」という歌詞を、
赤ちゃんとお母さんの歌だと思い込むところ、枕を赤ちゃんに見立てて抱きながらその歌を歌うところ、
それをマダムに見られてしまうところ、マダムとの再会でそのときのマダムの行動の謎が明かされるところ。

原作を読んだ後、私はマダムのせりふをコピーにとってノートに貼った。
「新しい世界が足早にやってくる。科学が発達して、効率もいい。
古い病気に新しい治療法が見つかる。すばらしい。
でも、無慈悲で残酷な世界でもある。そこにこの少女がいた。
目を固く閉じて、胸に古い世界をしっかり抱きかかえている。
心の中では消えつつある世界だとわかっているのに、それを抱き締めて、
離さないで、離さないでと懇願している。」

20年に亘る話を2時間にまとめるのだから、物語が脚色されるのは仕方がないこと。
それよりも、イギリスの美しい海辺の景色を眺めることができたのが、私はとても嬉しかった。
もしも願いが叶うなら、私がいま一番行きたい場所は海辺の町だから。